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育児

文献から考える腰痛予防:赤ちゃんの床からの抱き上げ方①

2020-05-16

このシリーズの概要

  • 赤ちゃんの抱き上げは、育児中に腰痛を起こす要因のひとつ
  • 赤ちゃんの抱き上げ方(≒リフティング手技)は、大きく分けると前かがみ式・スクワット式の2種類(+その他)
  • それぞれのリフティング手技のメリット・デメリット
  • 個人的におすすめする赤ちゃんの抱き上げ方

こんにちは。作業療法士らみです。

私は現在、0歳の長女の育児に奮闘中です。

 

何から何まで手探りの状態から始まる赤ちゃんとの生活。

いくら産前に予習していても、実際赤ちゃんに接して初めて疑問を抱くこともありますよね。

 

声かけ、授乳、オムツ替え、沐浴、爪切り、抱っこ、寝かしつけ…

何をするにしても、

このやり方で、赤ちゃんに負担がかかってないかな?

もっと赤ちゃんにやさしい方法があるのかも…

と考えてしまうのは、私だけではないと思います。

 

そして、我が子のためなら…と自分の辛さを我慢してしまうのもよくあることではないかと思います。

 

実際、3歳以下の子どもを育てている母親(n=9)を対象とした研究(以下、文献1)では、

mothers chose methods based on what was best for the child, without consideration of their own needs

引用:Susan D Griffin et al., Living with lifting: mothers' perceptions of lifting and back strain in childcare, Occupational Therapy International 7, no.1 (2000) : 1-20. (以下、文献1)

母親は我が子にとって何が最善かという基準でお世話の方法を選び、自分のことは後回しにしていた(意訳:作業療法士らみ)

と報告されています。

 

もちろん、命に関わることでは赤ちゃんの要求に早急に応える必要があります。

でも、その後回し(我慢)が年単位で続くとして、保護者のあなた自身が心身の健康を保てるでしょうか…?

 

らみ
できることなら、大人も子どもも負担の少ない方法で育児をしたいですよね。

 

今回は、作業療法士である私が、数多くある赤ちゃんのお世話のうち、「赤ちゃんの抱き上げ方」に焦点を当てて考えていきたいと思います。

 

赤ちゃんの抱き上げは、育児中に腰痛を起こす要因のひとつ

3歳以下の子どもを育てている両親を対象とした研究(以下、文献2)によると、

Sixty-six percent (66%) of the sample reported the presence of musculoskeletal pain

引用:Martha J. Sanders, Tim Morse, The Ergonomics of Caring for Children:An Exploratory Study, American Journal of Occupational Therapy, May/June 2005, Vol. 59, 285-295. (以下、文献2)

育児中に身体の痛みを感じる保護者は全回答者の66%(意訳:作業療法士らみ)

であり、その保護者らが最も影響を受けたとした身体の部位は、

the low back (48%), neck (17%), upper back (16%), and shoulders (11.5%)

引用:文献2

腰(全回答者の48%)、首(同17%)、背中上部(同16%)、肩(同11.5%)、膝(同10%)、指(同8%)、手首(同7%)、殿部(同5%)(意訳:作業療法士らみ)

と、全回答者の半数近くが育児により腰痛を経験していることが分かります。

さらに、それらの痛みの誘因として考えられることは、

having high biomechanical risks (p = .001), the perception that caring for children is highly demanding (p = .003), and performing hobbies less than 1 hour per week (p = .04)

引用:文献2

生体力学的リスクの高い育児タスクを行うこと(p = 0.001)、子どもに手がかかると感じていること(p = 0.003)、趣味の時間が週に1時間未満であること(p = 0.04)(意訳:作業療法士らみ)

であるようです。

 

ちなみに、この論文における「生体力学的リスクの高い(以下、ハイリスクな)育児タスク」は、以下のような動作を指します。

太字にした部分が今回のテーマに関係のあるタスクですね。

  • Carry child in car seat
  • Carry child on one hip
  • Carry child while bending down
  • Lift child up to or off a changing table
  • Lift child into or out of a crib  with high sides
  • Lift child up from the floor
  • Stand bent over to wash child
  • Change child on floor, crib, or playpen
  • Open baby food jars and cans
  • Push child on a seated toy
  • Breast feed in an awkward position
  • Bottle feed in an awkward position

引用:文献2

  • 子どもをチャイルドシートに乗せる
  • 片方の腰で子供を抱っこする
  • 腰をかがめながら子どもを抱き上げる
  • 床、柵の高いベビーベッド、おむつ替え台などから子どもを抱き上げる or 降ろす
  • 子どもの身体を洗うためにかがんで立つ
  • 床、ベビーベッドなどの上でおむつを替える
  • ベビーフードの瓶や缶を開ける
  • 子どもが座っているおもちゃを押す
  • こわばった体勢で授乳(母乳・ミルク)をする (訳&太字:作業療法士らみ)

 

先述のとおり、母親は子どもの要求にいち早く応えるため、やむを得ずハイリスクな姿勢をとったり、それを繰り返したりする場合があります。

 

らみ
確かに「早く抱っこしてー!」とばかりに赤ちゃんに泣かれると、気が急いてしまいますね…。

そして私の場合は、添い寝での寝かしつけ中に長女を起こさないよう、変な姿勢のまま動けないこともよくあります(笑)(泣)

 

保護者自身、今とっている姿勢やタスクがハイリスクなことなのか考慮していないということも文献1で述べられていました。

Consideration of the effect of a method on their back was given only when they experienced back strain.

引用:文献1

母親が子どもを抱き上げる際、実際に痛みがない限り、姿勢が腰に及ぼす影響はほとんど考慮されていなかった。(意訳:作業療法士らみ)

しかし、この「考慮」は、「赤ちゃんを抱き上げる方法次第で、保護者の腰痛リスクが上がる(下がる)」という知識がないとなかなかできないことですよね。

文献1ではその点も指摘していて、

The advice mothers were given on lifting and carrying … that is, how to hold the baby so that the baby would not be dropped or injured. After the baby was born little information was given to the mothers on their own care in relation to lifting and carrying the child, but once again focused on the child.

引用:文献1

出産前、母親が抱っこに関する情報として得られたのは、赤ちゃんを落としたり、怪我をさせたりしないよう抱く方法だった。 母親は出産後も、赤ちゃんを抱き上げて運ぶことと母親の体調管理を関連付けた情報はほとんど得られなかった。(意訳:作業療法士らみ)

という、産前産後の保護者指導についての言及もありました。

 

考えてみれば、私も産前産後に赤ちゃんの安全指導を受けこそすれ、(抱っこに関する)保護者の負担軽減に関する指導を受けた記憶はありません…。

私は運動学などの知識があったのもあり今のところ腰痛は防げていますが、そうでなければ腰痛に悩んでいたかもしれないなと思います。

 

なので、ブログなどを通して困っている保護者の皆様の力になれれば…と常々思っています。

 

長くなったので、今回はここまで。

 

 

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